大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(ネ)1487号 判決

以上認定の事実に徴すれば、前記山村辰雄の真意は被控訴会社から本件ブレーキオイルを買受ける意思ではなく、前記大栄に対する控訴会社の自動車運輸代金債権の代物弁済としてこれを受領する意思であつたとは思われるけれども、山村辰雄は控訴会社の代理人として被控訴会社の代理人たる前記佐藤正二に対し本件ブレーキオイル五ドラムを代金十九万五千円、昭和二十七年一月五日払の約定で買受ける旨の意思表示をしたものというべく、被控訴会社において右山村辰雄の真意を知り又は知り得べかりしことにつき何等の証拠のない本件においては、本件取引に関して右山村辰雄のなした該意思表示はその効力を妨げられるところなきものというべきである。

而して右山村辰雄において当時本件ブレーキオイルを買受けるについて控訴会社を代理する権限を有していたことについては、これを認めるに足る証拠がないけれども、控訴会社上野営業所長が同営業所におけるタクシー運送契約の締結並びに未収自動車運賃取立に関し控訴会社を代理する権限を有していたことは当事者間に争がないから、本件取引の当時控訴会社の上野営業所長であつた前記山村辰雄は右の如き代理権を有していたものというべく、従つて右山村辰雄のなした前段認定の行為は控訴会社の代理人がその権限外の行為をなした場合に該当するものというべきである。

而して以上説示したところに鑑みれば、他に特段の事情の認められない本件においては、被控訴会社の代理人たる佐藤正二は、控訴会社の上野営業所には本件ブレーキオイル買受につき控訴会社を代理する権限がないことを知らず、右営業所長たる山村辰雄との交渉によつて控訴会社との間に適法に本件取引ができるものと思つていたのであつて、佐藤正二がこの様に思つていたことはあながち無理からぬことと考えられるから、前示認定の如き事情の下においては、被控訴会社が右山村辰雄において本件取引をなすにつき控訴会社を代理する権限ありと信ずべき正当の理由あるものというべきである。従つて控訴会社は右山村辰雄が被控訴会社に対してなした本件ブレーキオイル買受の意思表示につきその責に任ずべきである。

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